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「首相動静」の取材

首相動静が注目を集めている。

新聞の2面、3面、4面あたりの下の方にちっさく掲載されている前日の安倍首相の行動だ。

誰と会ったか、どこに行ったか、コロッケを食べたとかどうでもいいことまで書いてあることも。5月30日の朝日新聞の首相動静を見てみよう。

【午前】7時33分、官邸。34分、報道各社のインタビュー。43分、国家安全保障会議。10時20分、皇居。帰国の記帳。38分、官邸。43分、野上浩太郎官房副長官。

 【午後】0時54分、国会。56分、参院議長応接室。57分、参院本会議場。58分、金田勝年法相。1時1分、参院本会議。3時55分、参院本会議散会。58分、官邸。4時、まち・ひと・しごと創生会議。4分、北村滋内閣情報官。18分、塩崎恭久厚生労働相、厚労省の吉田学雇用均等・児童家庭局長。52分、石原伸晃経済再生担当相、柳瀬唯夫経済産業省経済産業政策局長。5時、自民党本部。5分、同党役員会。33分、西村康稔同党総裁特別補佐。38分、官邸。44分、自民党の人生100年時代の制度設計特命委員会の茂木敏充委員長、小泉進次郎事務局長ら。6時6分、茂木同党政調会長。20分、鈴木宗男元衆院議員。55分、東京・赤坂の居酒屋「うまいぞお」。読売新聞東京本社の田中隆之編集局総務、前木理一郎政治部長、飯塚恵子国際部長と食事。9時57分、東京・富ケ谷の自宅。



この日は前川前文科次官の告発と、それに対する読売新聞の出会い系バー疑惑記事が世の中を騒がせ始めたころだ。その読売新聞の関係者がタイミング良く安倍首相と会食しており、注目を浴びた。この傾向は業界人としてとても面白いなと感じている。

よく地方新聞にはその日の知事や市長の予定が掲載されている。ただ、大体にしてそれは自治体の秘書課が発表した資料ベースの情報だ。当然公務のみで、政務(政治的な活動)については掲載されない。「知事」として活動しているときの予定しか出ない。

ただ、首相動静は違う。家を出るときから、家に帰るまで、ひたすらに担当記者がへばりついていく。家を出た瞬間から「首相」なのである。

首相動静の取材は共同、時事の両通信社の記者が担当する。これは慣例だ。ある意味では特権とも言えるのだが、別に首相と気楽におしゃべりできる訳でもないので、大した役得などない。しんどいだけだと私は思う。どうでもいいが、共同の方が年次が上のケースが多いので、場合によっては面倒な仕事を時事に押しつける場面もみられるとか、みられないとか。

大体首相を担当する「首相番」は政治部の1、2年生が割り当てられる。2社を合わせて10人くらいだろうか。その中でシフトを決め、その日に首相について回る人間(共同と時事の記者のペア)が決まる。

朝の自宅からスタート。官邸に入ったら、ひたすら官邸で首相部屋に入る人間を監視する。官邸に入るとき、出て行くときに何者なのか、何をしに来たのかを聞く。外に出れば「番車」と呼ばれる車でひたすら追いかけ、建物に入れば首相と同じエレベーターには乗せてもらえないので階段で全力ダッシュで追いかける。ひたすら、それを首相が家に帰るまで繰り返す。その情報を全社に流す。

行ったことがある人はほとんどいないと思うが、官邸の玄関には記者がたむろしている。人の出入りを監視しているわけである。

正直、こんな無駄な仕事があるか、と常々思っていたのだが、最近の注目をみるとそうでもないようだ。確かに、日本のトップの一挙手一投足は即座にトップニュースになりうる。誰と会っているか、というのは政策などにも直結するだろう。さらにいえば、政治家の手の上で踊らされる発表ニュースやリーク記事より、純粋な事実を記した動静はファクトとしての価値が大きいかもしれない。だからこそ、読売新聞が圧倒的に安倍首相と会食している事実も表に出る。分析すればいろいろなことが分かるかもしれない。

ただ、最後に言っておかなくてはならないのは、首相側が秘密で会おうと思えばいくらでもそれは可能ということだ。官邸にも記者がマークできない出入り口はあるし、自宅でも会おうと思えば誰とでも会える。

また、事実として世の中に出ていても、「Aと会った」という事実から深掘りできる取材をしないと問題意識は深まらない。首相を追いかけ回す首相番はべらぼうに忙しいので、それは無理だ。政治部にもフリーで政治家の問題を明らかにする遊軍のような立場をもっと増やすべきだと思う。

国民がさまざまな細かい事実の変化、違和感に気付き始めている。メディアの劣化は国民の劣化、と言われることもあるが、劣化したメディアを国民が支えようとする世の中は、悪くないと思う。
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